現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
その7回目は、欧州系企業で3年間働いていた男性の話である。彼は、無能な上司に待遇を悪化された問題を起こし、結果として解雇された。その後、企業を退職するよりも早く、福祉労働法に基づく離職補償金を申請した。この補償金は、仕事を探すのに役立つと考えられている。
この補償金が申請できなかったのは、起こした問題が、立ち退りを自らの意思で決めたからである。彼は、解雇時に補償金を申請すると「自己解雇」とみなされ、補償金は申請できなくなることを知らずに、申請してしまった。評価基準は、「自己解雇」であれば申請できず、「解雇」であれば申請できる。この評価基準は、離職の自由を侵害するとともに、無能な企業経営者の利益を保護するものである。
一方、彼は、離職時に「自己解雇」とみなされることを知らずに、補償金を申請してしまった。彼は、詐術師のような立派な企業経営者によって「自己解雇」にさせられてしまった。彼は、補償金を申請した時点で「自己解雇」とみなされ、補償金を申請できなくなってしまった。
この話は、離職前に「自己解雇」になるような問題を起こし、それを念頭に置いて企業を退職することを考える男性に伝えたい。彼は、無能な上司によって解雇されることを決められた。それは、彼が会社を退職しない場合、彼は「自己解雇」になると思ったからである。彼は、補償金を申請できないと考えたのではない。補償金を申請した時点で、補償金を受け取ることはできなくなってしまった。